九份はじめに
その昔、九份に暮らす人々はわずか9世帯で、道が通っていなかった頃、すべての物資は水路を使って運ばれていました。当時、なにかにつけ「9世帯分」の物資を調達していたため、その名がついたといわれます。
台湾東北部の丘陵地で山を背にし海に面した土地柄の九分はかつて金鉱として栄えました。1890年に金脈が掘り当てられ、そもそも9世帯しかなかった貧困な村が、瞬く間に三、四千世帯の巨大都市へと変貌しました。「アジアの金の都」といわれ、「小上海」、「小香港」の異名さえ取っていた時期もありましたが、ゴールドラッシュ熱が冷めるにつれ、廃れていきました。
が、そのうち、ここでいくつもの映画が撮影されるようになり、ベネチア国際映画祭では、侯孝賢監督の『悲情都市』がグランプリを受賞するなど、国際舞台ですばらしい成績を修め、忘れかけられていた小さな村が再度注目を浴びるようになりました。古びた町並み、建物、廃坑と燦燦と輝いていたゴールドラッシュの時代が再現され、昔のような活気を取り戻しつつあります。山道散策に疲れ足を休めたければ、九份ならではの茶屋に立ち寄り、おいしいお茶を飲みながら、基隆沖の美しい海を眺めるのも一興です。
村の目抜き通りに当たる基山街は絶えず観光客でにぎわっています。この通り沿いには、九份名物の「芋円、蕃薯円」(タロ芋やさつまいもで作った団子)や現地ならではのB級グルメが味わえるほか、今も残されている文物も目にすることができ、歩いているだけでわくわくした気分にさせられます。また、ここでは宿泊施設も完備されているため、時間が許すなら、自分好みの旅館を探し、美しい夜空や漁り火見物をゆっくり楽しんでいくのもおつなものです。
新北市瑞芳区に位置する3つの美しい町、「水湳洞」、「金瓜石」、「九份」。ここはそれぞれの頭文字を合わせて、『水金九(台湾語の「美很久」と似た発音、美しさが長く続くという意味)』と呼ばれています。水金九は台湾鉱業の縮図と言われ、歴史的にも文化的にも興味深い土地です。ここは採金事業によって繁栄した歴史をもち、それぞれの町では採鉱方法が異なったため、独自の文化が築かれました。素朴でかわいらしい雰囲気の「水湳洞」、静寂に包まれて落ち着いた雰囲気の「金瓜石」、鉱員たちの夜遊び場として賑わった「九份」。金鉱の採掘が停止された後も、各町は異なる特色をもち、大勢の行楽客を惹きつけています。
水湳洞には「ポンペイ古城」のような十三層選鉱場や黄金色と青色の海水が混ざり合った「陰陽海」、神業のような自然景観の「黄金瀑布」があります。金瓜石は独特な静寂に包まれた山里で、素朴で懐かしい雰囲気に満ちています。観光客で賑わう九份の古い町並みには、歴史文化に関する故事が数多く、芸術的にも見どころが多いスポットです。旅行者の日頃の疲れを癒してくれ、素朴ながらも奥深いスピリチュアルなスポットとなっています。